2020年度
・年初から吹き荒れたコロナ禍により、当協議会の活動も大きな制約を受けました。
2013年から開催し全国の支援者、当事者家族等に参加いただいてきた「高次脳機能障害実践的アプローチ講習会」は新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大防止を考慮し、中止せざるを得ない状況になりました。
・飯田橋の東京都心身障害者福祉センターおよび東京慈恵会医大学附属第三病院で開催してきた医療及び家族相談交流会も非常事態宣言等の状況下、年6回予定のところ、3回の開催に留まりました。
・港区から委託され、港区障害保健福祉センターでの、高次脳機能障害相談会相談支援は、コロナ禍で毎月はできず、8回の開催に留まりました。
・例年東京都に提出している「予算要望書」、今年度はコロナ関連に絞って取り纏め9月に東京都に提出し、また各党派に説明し理解を求めました。

2019年度
・2013年から開催しています「実践的アプローチ講習会」を6月、9月の2回、永田町のJA共済ビルで開催しました。
・一般社団法人日本損害保険協会の助成を受け、「東京都高次脳機能障害リハビリテーション講習会」を開催しました。
主催:東京都高次脳機能障害リハビリテーション講習会実行委員会、
協力:TKKで、8月31日(土)午後、国立オリンピック記念青少年総合センターカルチャー棟、基調講演、各種団体による支援プログラムの紹介、体験談とコンサート等、多彩なプログラムで当事者・ご家族、支援者および関係者約400人の方にご参加いただき、お楽しみいただきながら学んでいただきました
・医療及び家族相談交流会を年6回、飯田橋の東京都心身障害者福祉センターおよび東京慈恵会医大学附属第三病院で開催しました。
・港区から受託し実施している高次脳機能障害理解促進事業、区民向け講演会、支援者・専門家向け研修会を合計3回実施しました。また2015年から実施している「港区高次脳機能障害相談会」も継続し、港区障害保健福祉センター(ヒューマンぷらざ)で毎月開催しました。

2018年度
実践的アプローチ講習会
例年通り3回、5/27(日)、9/16(日)、12/9(日)に東京慈恵会医科大学 西新橋校大学1号館講堂で開催しました。今年度も各回とも全国から約200名の方々に参加頂きました。
医療及び家族相談会
東京都心身障害者福祉センターおよび東京慈恵会医科大学付属第三病院で各3回、計6回実施しました。各回とも先着順に3組まで受付け、1組につき約1時間ご相談に応じました。
■高次脳機能障害支援法(仮称)制定に向けて
理事会メンバーで高次脳機能障害の啓発や支援体制の充実を図るため、新たな支援法制定を目指した活動に取り組みました。具体的には現状の法制度での支援、それを充実、強化するための方策、そして新たな法制度で実現、担保すべき支援、制度について検討しました。またNPO法人 福祉フォーラム・ジャパン主催の10/23シンポジウム、高次脳機能障害者をどう支えるか~社会的支援法(仮称)制定に向けて~に参加し、各界のパネラーの意見を拝聴しました。
また法制化により支援が大幅に強化されたと言われている発達障害支援法の制定経過、支援法の具体的内容について有識者をお招きしての勉強会を開催、また家族会等関係団体へのヒアリングも実施しました。
港区主催「高次脳機能障害講演会・研修会」(TKK受託)
2019年1月23日(水)、1月30日(水)両日の夜、港区男女平等参画センターで開催しました。平日の夜にも拘わらず、都外からも含め100名以上の方に参加頂きました。
港区高次脳機能障害「相談会」
平成30年4月から平成31年3月までの毎月第3木曜日の午後、港区障害保健福祉センターで開催しました。

2017年度
実践的アプローチ講習会
2013年度以来、3回シリーズで開催してきました本講習会ですが、2017年度はTKKの周年事業と重なった為、5月と11月の2回シリーズで東京慈恵会医科大学大学1号館講堂において開催致しました。
社会的行動障害への対応、滋賀県の取り組み、社会制度の利用、医学的根拠に元基づいたリハビリテーション、小児への支援、就労支援に取り組まれている方々に登壇頂きました。また、今年度は各回の4講義目に事例検討会を取り入れました。講師が予め用意した困難事例について会場の受講者がグループに分かれて意見交換を行い、それらをまとめた発表を行いました。座長の渡邉先生や山口先生よりの的確な解説も加わり、充実した検討会となりました。
医療及び家族相談会
高次脳機能障害者と家族のための相談会を、例年通り東京都心身障害者福祉センターと東京慈恵会医科大学附属第3病院を会場として合計8回開催しました。
TKK発足15周年・NPO法人設立10周年「記念講演会」
開催報告:理事長 細見 みゑ
15・10周年「記念講演会」を2017年(平成29年)8月27日(日)浜離宮朝日ホールで行いました。小ホールを満員にする程、盛会に催行できましたことは、TKK加盟団体、実行委員、スタッフ、ご出演の講師の方々を始めご理解ある参加者のお陰様によるものと、先ずは皆様に心より御礼申し上げます。開会前の会場ロビーでは、TKK加盟団体の活動紹介パネルが立ち並び、大勢の参加者で賑わいました。
開会の辞の際は、小池百合子東京都知事にご臨席いただき、高次脳機能障害についてご理解のある温かい、しかも力強いおことばを頂き、有り難く思いました。
第1部の、TKK加盟団体紹介プレゼンテーションは、加盟団体さん達の活動を見事に表現した力作揃いでした。
第2部「ご本人たちに伺う~脳損傷からの回復」のその1は、渡辺修先生の「高次脳機能障害のこれから」ついてのご講演でした。今回も、美しい画面と巧みな解説による、分かり易い素晴らしいご講演でした。その2は、長谷川先生座長で、磯貝さんご夫婦の夫婦愛と復職までの道のりの、パワーポイントによる報告と対談。未来志向で、心が明るくなりました。その3は、渡辺 修先生座長で、頭部外傷の野口さんとお姉さんたちとのリハビリ・復職・新たな就労への挑戦など、パワーポイントによる報告と対談。お姉様がたと弟さんとの姉弟愛に満ちた頑張りに、乾杯 !! でした。
最後の第3部、松本方哉氏の「突然 妻が倒れたら」のご講演は、さすが、メディアにおられた方であり執筆のプロでおられるだけに、当事者を介護する家族の思いをドラマチックに表現なさり、会場の皆さまに感涙の渦を巻き起こしました。
お帰りになる皆様からは、「本当に良かった、素晴らしい講演会をありがとう。」と言って頂き、これは、お世辞抜きで、本当に皆さまに感動して頂けたと思っております。
このように、15・10周年「記念講演会」を盛会にて終えることができましたことは、ご参加及びご協力の皆様に深く感謝申し上げますと共に、高次脳機能障害についての理解促進と支援拡充に役立ったことと確信しています。
港区主催「高次脳機能障害講演会・研修会」(TKK受託)
開催報告:理事長 細見 みゑ
・講演会:2017年(平成29年)10月22日(日)午後、男女平等参画センター「リーブラホール」
講演1「高次脳機能障害の方への地域支援~家族会を取り巻く支援システムについて」
 講師:納谷 敦夫氏(なやクリニック院長/堺脳損傷協会/神経精神科医)
納谷先生は、神経精神科医でおられるが、交通事故で脳外傷を負われ重度の障害を持つ息子さんの父親の立場でもおられます。そのご講演は、医師としての視点と家族としての思いで語られ、聞く人の心を揺さぶるものでした。先ずは息子さんの脳外傷の経過、脳損傷の原因と重症度について、脳が傷つくとどうなるか、高次脳機能障害の問題、家族会について、堺市における高次脳機能障害のネットワークについてなど講演された。特に印象深かったことで、植物状態(遷延性意識障害)にある命の価値についての二つの対立した考え~フランス・ドイツ・イタリア・スペインと、英国・北米・オランダ:北ヨーロッパの人々の命に対する考えとの違いは、選択することの出来ないほどせつなく、重い問題であると痛感させられました。
講演2「高次脳機能障害へのリハビリテーション~グループ訓練を中心に~」
 講師:石川 篤氏(東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科/作業療法士)
高次脳機能障害へのリハビリテーションとしてグループ訓練(集団療法)の実際(事例)を紹介。高次脳機能障害になると、社会との機会が減少し、孤立した生活を余儀なくされる。自分を振り返ることは苦手でも他人のことはよく見えるもの。集団療法は病識を促す効果があり、居場所、情報共有、ピア・カウンセリングの効果もある。医療枠で精査できる医療モデルのオレンジクラブについて説明。羅心版・リンチピン・内私鏡など集団認知行動プロブラムの種類も増えきた。高次脳機能障害の改善には、社会に出る前にこの集団療法を取り入れることは大変に有効とのことでした。
第1回研修会:2018年(平成30年)1月24日(水)夜、男女平等参画センター「リーブラホール」
講演「高次脳機能障害者の復職」
 講師:羽田 拓也氏(東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科/医師)
高次脳機能障害の様々な症状のうち、復職の妨げになり易い障害は何か…失語症、失算、病識の欠如、意欲の低下、脱抑制、易怒性などであるとのこと。脳には可塑性と機能的再構築がある。ではこれらを高め、促進させる方法には…リハビリ(PT・OT・ST)、薬物、TMSがある。TMSは脳の可塑性を最大限に引き出す治療方法とのことで、失語症もTMSで治療可能とのこと。但し、TMS治療対象の方は、復唱できる。心臓にペースメーカー、頭蓋内に金属が入っていない、痙攣の既往歴が無い、精神疾患がない、生活が自立している、などの方に限るなどの制約がある。現在、アパシー(意欲の障害)に対する臨床研究もやっており、今後のTMSの適応拡大を目指しているとのことでした。
パネルディスカッション「高次脳機能障害者の復職」
座長:羽田 拓也氏
 パネリスト:当事者A氏及びご家族(妻)、支援者小出由貴子氏(港区障害保健福祉センター機能訓練支援員)・石川洋平氏(港区障害保健福祉センター相談支援専門員)
40代の働き盛りに、転落事故による脳外傷。前頭葉症状が残った。受傷後10ヶ月でリハビリテーション病院を退院、在宅となる。 12ヶ月後から自立訓練のため通所。16ヶ月後頃から復職に向けたカンフアレンスを開始する。16ヶ月後には午前中のみから復職してみる。24ヶ月経つが、受傷前と同じ量の仕事をこなそうとしてしまう。焦ると仕事の能力が落ちる。障害を受け入れ、仲間の力を借りることで仕事をすることは脳の機能向上につながる。脳を損傷しているのだから元の業務レベルに近付くには年単位の時間が必要である。支援が有効に作用して復職を成功させるには、ご本人の受傷前の性格と能力の把握・ご本人の障害の受容・ご家族の協力・会社の理解と協力体制・主治医からの専門的な指導が重要であるとのことでした。
第2回研修会:2018年(平成30年)2月7日(水)夜、男女平等参画センター「リーブラホール」
講演1「感情、行動、意欲など高次脳機能障害の困難事例」
講師:渡邉 修氏(東京慈恵会医科大学附属第三病院リハビリテーション科/医師)
高次脳機能障害の中でも、感情、行動、意欲などの障害が回復しない場合は何故なのか?何故、社会参加が進まないか? ①損傷範囲(広さと部位)、②環境要因(自信の喪失、社会からの孤立)、③既往症(うつ病、発達障害など)、もともとの性格・人格・能力、の要因が考えられる。自信を持てるような環境調整が必要。適切に使うと薬物療法の効果は大きい。重度の例は、医師、医療スタッフ(PT・OT・ST)、家族、地域資源(ケアマネージャー・看護師・MSWA)がチームとなって取り組むことが重要。自発性の低下と易怒性に対しては、落ち着いた環境設定と、本人の嫌なことは避ける、笑顔や協調性があることに注目、動機づけを促す対話技法など、本人のニーズを大切にする環境調整が大切とのことであった。
事例検討会「高次脳機能障害の困難事例について皆さんと検討」
座長:渡邉 修氏
検討事例:16才、男性、高校1年性、母子家庭、友達も多くサッカー好きの元気な学生だった。交通事故で本人は脳挫傷、高次脳機能障害。母は死亡。祖母の元から高校に復学するが不登校になる。暴言、暴力あり。日常生活は自立。
検討事項として、①どのような高次脳脳機能障害があるか? ②祖母への暴言や物品破壊行動への対応は? ③今後の生活指導は? ④学校(学業)に対しどのようなアプローチが必要か? 等々について会場の皆さんと熱い検討会が行われました。
港区高次脳機能障害「相談会」
報告:理事長 細見 みゑ
毎月第3木曜日午後、平成29年4月~平成30年3月の合計12回開催。港区立障害保健福祉センター
相談会では、港区立障害保健福祉センターの相談支援員(ST、OT、SW、PSW)とTKKとみなと高次脳の役員(家族)が相談支援に当たりました。
相談内容は、医療、リハビリ、福祉、在宅生活、福祉制度、福祉的資源、就学、就労についての相談の他、特に交通事故、職場での事故、労災事案、年金事案などの損害賠償、保障、権利確保など、法律や制度に関わる経済的な相談が回を増すごとに増えています。これには、困難を乗り越えてきた家族の体験からの知恵やアドバイスが好評だからなのでは、と感じた次第です。

2016年度
■2016年度「実践的アプローチ講習会」は例年通り東京慈恵会医科大学大学1号館講堂にて、5月・9月・12月に開催しました。毎回午前中に1講義、午後に3講義が行われますが、参加の方々は最後まで熱心に静聴されていました。
本講習会の座長である渡邉修先生(医師)よりは高次脳機能障害の理解と対応について(第3回目)、また山口加代子先生(臨床心理士)からは家族支援のあり方について(第1回目)講義がありました。その他、全国から招請した講師より就労支援、日常生活支援、成年後見制度の利用等、幅広いテーマで講義が行われました。いずれも中身の濃いものであり、治療や訓練そして生活支援の場で参考になる内容であったと思います。
「実践的アプローチ講習会」は2013年度に実施し4年になりましたが、受講者は全国の専門家、支援者を中心に延べ3000人に達しました。
■高次脳機能障害者と家族のための「医療及び家族相談会」を、平成28年6,7,10,11月、平成29年1,3月の合計6回、東京都心身障害者福祉センターと東京慈恵会医科大学附属第3病院を会場として開催しました。
延べ15件の相談がありましたが、当事者は男性が95%を占めました。起因は脳外傷(交通事故など)が一番多く7件、次いで脳血管疾患6件、脳腫瘍2件等でした。発症時の年代は10代、20代、30代、40代がそれぞれ1件ずつ、50代5件、60代3件、70代が2件でした。脳外傷の方が多かったためか7割近くが50代までの働き盛りの方で、経済的また将来についてのご不安をお持ちでした。40代、50代の脳血管疾患による方々は、介護保険法と障害者総合支援法の利用が課題でした。
具体的な相談内容は、転院先、リハビリや日常生活について、障害者手帳や年金の取得、復職・就労、社会的行動障害(感情及び行動面の障害)への対応等々でしたが、労災問題や交通事故の損害賠償等々についての相談も多くありました。
■港区主催「高次脳機能障害講演会・研修会」(TKK受託)
・一般区民向け講演会「高次脳機能障害 講演会」を、平成28年10月22日リーブラホールで開催しました。港区に加え都内全域、また近県からの多くの参加者で満席となりました。
東京福祉大学精神リハ学教授で、埼玉県総合リハセンター精神科医の仙崎 晃先生の講演「認知症、精神疾患、高次脳機能障害?どう違うの?どう対応すればいいの?」は、事例を多く取り入れてのご説明で分かり易く、特に先生のお父上の事例は心打つ感動のお話でした。
慈恵医科大学附属第三病院MSWの鈴木亜都佐先生の講演「高次脳機能障害になられた方を繋ぐ?ソーシャルワーカーの役割と事例紹介」は、患者さまと向き合う支援者の方々には是非知っておいて頂きたい、傾向と対策の参考書のような内容でした。事例を交えての具体的で詳細なソウーシャルワークは、支援者の今後の業務に大いに役立つことと確信します。
・支援者・専門家向け「高次脳機能障害 研修会」を、平成29年1月25日、2月1日の2回、リーブラホールで開催しました。この研修会も港区をはじめ近隣の区や近隣の県の自治体・医療・支援団体関係から大勢の参加がありました。
1月25日は慈恵医科大附属病院原 貴敏先生の講演:「高次脳機能障害者の一人暮らしの支援」で、後半は「事例から考える?一人暮らし支援について」と題し、当事者Aさん、自立訓練事業支援員、相談支援員さん達の出演による事例報告でした。忍耐強い支援の御蔭で、荒んでおられた当事者の方も今では穏やかに楽しんで働いておられると言う、社会的行動障害の社会復帰成功事例でした。2月1日は慈恵医科大附属第三病院の渡邉 修先生による「高次脳機能障害者の就労支援」の講演で、高次脳機能障害についての就労支援と就労への仕組み、その事例などを分かり易く講演されました。後半は、港区在住の当事者Bさん、就労支援に携わったみなと障がい者福祉事業団の支援員や特例子会社の上司の方達による事例報告で、適切な支援の結果、特例子会社に就労されるまでの道のりと現在従事しているお仕事についてのお話でした。
・「高次脳機能障害 相談会」は2年目の事業で、毎月1回、第3木曜日の午後、港区立障害保健福祉センター相談室で開催しました。相談スタッフはTKKや「みなと高次脳」の役員、港区障害保健福祉センター職員、相談者は、港区に留まらず、台東、足立・品川・渋谷などの他区、および近県からも相談に来られました。この相談会は、自治体の専門相談員に加え、経験豊かな家族達も相談員となっているために、不安の解消、転院先、今後の方向性、また社会資源の情報や活用方法など、多岐に渡る事柄の相談の機会になっています。